Sweet Room~貴方との時間~【完結】
香水よりアロマキャンドル
 キッチンへ行こうとする杉山に向かって「何か手伝おうか」と聞いたとき、杉山が答えるよりも早く、宏実さんが「ナオちゃんはいいの。涼太、よろしくね」と言った。
「でも」と言うと「佐伯さんは手伝わなくていいですよ」と杉山も言った。そのとき「佐伯さんは」の『は』を強調していた。宏実さんは全く気にしていない。

「そうそう。ナオちゃん、一緒にゆっくりしよう」
 宏実さんは私の腕を引っ張って隣りに座らせる。そして「ねえ、ナオちゃん。さっきからずっと思ってたんだけど」と、真剣な顔で話し始めた。
「髪、ツヤツヤだね。どれくらいの割合で美容院に行ってるの?」
「え?」
「あ、ヘッドスパ、まめに行く方?」
 あまりに真剣に聞いてくるから、何事かと思った。

「3カ月に2回くらいの割合でヘッドスパに行くかな。美容院は2カ月に1回」
「そっか。やっぱりそれぐらいの割合で行かないとだめか。私、ホテルで働いてるでしょ。乾燥しやすくて。客室清掃に比べたらましなんだろうけど」
「ホテルって、乾燥するからね。でも、見た感じだと、髪の毛、そんなに乾燥してる感じはしないけれど」
 これはお世辞ではなく本当にそう思った。緩めにパーマがかけられている髪は柔らかそうだった。
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