恋愛メンテナンス
clean 3 王子様は嘘付き
ある日の土曜日。

朝から引っ越し屋のトラックが横付けして止まっていた。

誰か引っ越すのかなぁ。

隣りの変な奴らが、引っ越すなら安泰だよね~。

でも期待外れだった。

私の部屋の真下は空家になっていて、どうもさっきからガタガタ音がするから、逆に誰かが引っ越して来るのかなぁ。

まぁ、いいや。

私は買い物へと向かう準備をしていた。

そして、また元彼から着信…。

コイツの行為ってほぼストーカーじゃん!

いい加減にしてよね!

おまえなんぞ、無視じゃ!

せっかくの朝の気持ちいい気分が台無し。

一変して、ムカツキモードに変わってしまった。

別れた後なのに、束縛なんてしないでよ!

あんたが結婚だなんて、この私に言うから別れる事になったんだから、あんたの自業自得じゃない!

私はアパートの階段を降りて、敷地内から足を出した、その時だった。

「としこ!」

路駐停車していたトラックの前には、見覚えのある車。

馴れ馴れしく呼び捨てで、私の名を呼んで中から出て来たのは元彼だった。

「ゲッ!」

うそでしょ~!

何で居るのよ!気持ちワルッ!

間違いなく、ストーカー!!

「あぁ、久しぶり」

普通を装っても、正直者の私。

顔に露骨に出してしまう。

「電話も出てくれないなんて、寂しいじゃないか。大丈夫か?元気でいたか?心配してたんだよ?」

逃がさないように、腕を掴まれた。

「そらぁ、もぉ、元気だよ。今は休みを満喫中」

だから、とっとと失せろ!

私は目も合わさずにいた。

「俺、ずっと後悔してたんだよ。どうしてもおまえに謝りたくてさ。強引に結婚の方向へと持って行って、おまえの気持ち全然考えてなくて。いや、本心はきっと喜んでくれるんじゃないかって、当たり前のように思ってて…」

本心では喜ぶ?

当たり前って、あんたが何で当たり前って決めんのよ。

だから、嫌なのよ!

まず私の気持ちを、勝手に決め付けていた所からして、話になんない!

「いい、いいって…。もう謝るだとか、なんだとか私の事、考えてくれなくてもいいから」

私は腕を離そうとしたが、更に強く掴まれる。

「なぁ、もう一度やり直せないかな?俺はおまえとは別れたくないんだよ。結婚はしなくてもいい。恋人として一緒に居よう?」

「なんで?!何で、そんな1度別れた人とまた恋人に戻れると思うの?理由が有って別れてる事、忘れないでちょうだい!」

私はムキになって言った。

「それでも私と切りたくないとしたならば、私の都合のいい友達としてしかないんだから!その他の関係は一切ない!一切ないの!」

私は終わった男とは、いつまでもウダウダしたくない。

そうやって今までも、自分にとって面倒臭い人間は捨ててきた。




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