恋愛メンテナンス
clean 8 ミドリムシ
面接!面接!

駅まで自転車を乗って、電車で一駅行きく。

更にまた少しだけ歩いた場所に、○○メンテナンス株式会社の営業所がある。

履歴書も筆記用具も印鑑もOK。

採用されたら、今週末からでも働ける。

準備は万端。

では、朝の9時という約束の時間で。

いざ、出陣!

第一印象が大切だから、少し大人しめな笑顔で営業所の入口を開けた。

「おはようございます」

…シーン…。

二人の事務員の60代のオバサンが、近寄って来た。

「本当に女の子だよぉ~。30代にゃ、見えん容姿だ」

「アラサーだって言わなきゃ失礼だよっ」

笑ってるけど。

挨拶なしで、全然フォローになってない。

「あの、今日面接に来た者なんですが」

私は囲まれながら、オドオドと聞く。

「聞いてるよ、美空さんでしょ?」

「はい」

「じゃあねぇ、奥のツイタテの向こうにソファーがあるから、そこで座って待ってて貰える?」

「ゆっくりしてたらいいわ」

タメ口かよ。

仕事やる気あんのかよ、このオバサンたち。

とりあえずは、

「はい」

黒塗りの長ソファーに座り、カバンから必要な物を取り出していた。

「寒かったでしょう?朝の早くから面接だなんて。暖かいお茶でも飲んでぇ、身体暖めとってぇ」

お茶を差し出されて、

「有難うございます」

タジタジで頭を下げる。

すると片方のオバチャンも、

「所長は急な用で居らんから、今日は副所長が面接してくれるからね」

電話のオジサン、所長だって言ってたなぁ。

優しそうな穏やかな声してたなぁ。

じゃあ副所長って、どんな人?…

私はツイタテの奥で、コッソリお茶を啜っていた。

入口が開くと、

「おはようございます。悪い、少しだけ遅刻」

誰か入って来た。

「全く、面接で可愛い女の子を待たすだなんて、男として最低ですよ」

「分かった分かった」

意外と若い声。

まだツイタテで見えないけど、慌ただしくしてる。

この人が副所長さん?

ってか、聞き覚えのある声のような…。

チラリと見えたエメラルドグリーンの作業服。

うわぁ、やっぱり可愛い色だなぁ。

癒しの緑だよぉーーっ。

私は下を向いて待っていると、ツイタテから現れた。

「遅くなりまして、申し訳ありません。○○メンテナンス株式会社、○○営業所、副所長の永田と申します」

コイツも永田かよ。

世の中、永田だらけ…。

えっ?…

見上げて、驚いた。

あぁっ?!

あぁぁぁーーーっ!!!

深く頭を下げて、ソファーに腰掛けたのは、101号室の永田 輝だった。


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