エリートなあなたとの密約
理想ゆえ、たゆたう心


短期出張から帰国した修平はその後、シカゴ本社との往来が以前にも増していた。それに加えて、従来の諸外国への出張までこなす日々である。


以前のように、彼の運転する車で一緒に通勤することも滅多にない。いや、ここ最近は皆無である。


とにかく修平が日本にいる方が少ないためだ。――これは本人が好まない言い方ではあるけれど、このところの彼は誰の目にも多忙に映るだろう。


そんな毎日の中で体調を崩さないように願いながら、数少ない自宅での食事にはなおさら気を配っていても、やはり共働きだと限界もある。


まして修平は日中、仕事に熱中するあまりに食事をおざなりにしてしまう性質。これは部下ゆえに知り得ていた。


そんな時は、すかさず秘書課所属の絵美さんが彼を叱咤してくれている。鋭い眼をしたルック・キラーの厳しくもあたたかい監視は、私にとっても本当に心強い存在だ。


かくいう私の方も、短納期のサンプル品の制作が立て込んでおり、名古屋で行なった挙式以降は休暇が一日も取れずにいた。


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