たったひとりの君にだけ
chapter.3



目が覚めると奴はいなかった。


体はとても軽くなっていて、熱は平熱プラス1.5℃の37℃だった。

キッチンは奴が来る前と何ひとつ変わらず綺麗に片付いていて、コンロに鍋が一つ残されていただけだった。
割と多めに作ってくれたらしく、その後もしっかり頂いた。

ナイトテーブルには書置きが一枚残されていて、『おはようございます。鍵はエントランスのポストに入れておきます。ちゃんと病院に行って下さい。お大事に!』と書かれていた。

キーケースから外された鍵は、書かれた通りの場所に入れてあった。
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