アロマな君に恋をして
14.意気地無しリングピロー

-side 大久保麦-


正直、最初は何を言われても引き下がる気なんてなかった。

俺とアユはなんでもないし、何よりなずなさんのことが好きだから……

でも、あのむかつくオーナーと付き合うことにした、と彼女の口から聞いた時に、俺は急に臆病になった。


なずなさんがもし本当にあの人を好きになったのなら俺にはどうしようもないし、俺は母親をなくしてからずっと、欲しいものを欲しいと言うことが苦手なのだ。

……相手が大切な人ならなおさら。


そしてどうすればなずなさんが幸せになれるのか、ぐちゃぐちゃな頭で考えた結果……自分は身を引く、そういう行動に出るしかなかった。


「短い恋人期間だったな……」


自分の部屋に帰ってきて、真っ先に向かったのは作りかけのクリスマスプレゼントが置いてある寝室。

デスクに置いてある未完成のスノードームを手に取ると、男のくせに女々しく涙が湧きあがってくる。


今までなんの疑いもなく、なずなさんとの幸せな将来を夢見ていた。

なのに、すぐそこに迫っていたクリスマスさえ、一緒に過ごさずに終わってしまった……


やりきれない思いばかりだけど、これだけは願わずにいられない。


どうかなずなさんが幸せになれますように……


徳永さんが彼女の笑顔を奪うようなことをしませんように……



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