禁域―秘密の愛―【完】
6:失った初恋
ーーーー巧の婚約者のことを知った数日後のことだった。
「………綾瀬!」
教室で、昼休みに愛ちゃんと話していた私をいきなり担任の先生が呼びつけたのは。
「はい?」
何の用事だろうと思いながら先生の元に駆け寄った。
「今、時間あるか?」
「はい………ありますけど。あの………先生、どうかされましたか?」
「ーーー………実は桐谷の父親が、綾瀬を呼んでるんだ」
「えっ…………?」
巧のお父さんが………私を呼んでる?
いきなりの思わぬ展開に私は思わず身体を硬直させた。
「今すぐに、綾瀬と話がしたいと………。本来ならこんな話は断るんだが、…………その、言いにくいことに、桐谷の父親はこの高校に多額の寄付金をいつも納めているんだよ。………だから、皆先生方も断れないんだ」
「そ………うですか」
巧のお父さんがわざわざ学校まで来て私に会いに来る理由なんて………一つしかない。
…………巧とのことだ。
「………分かりました。行きます」
先生達でさえ太刀打ちできないのなら、巧のお父さんの元へ行くしか方法がない。
そこで何を言われるかは………分からないけど、どうせなら言いたいことを私も言おう…………。
「………綾瀬!」
そう胸の中で決意し、先生に頭を下げ、教室を出ようとした私を先生は呼び止めた。