砂漠の夜の幻想奇談
第五話:二度目の求婚


 日のある時刻と夜とでは、シャールカーンの寝室は違ってみえた。

一昨日は月明かりと夜の闇で幻想的な様相だったが、今は風通しのよい大きな窓から太陽の柔らかな光を存分に受け入れており、シャールカーンが寝台に寝転んだとしても妖艶な雰囲気にはならないだろう。


「さて、サフィーア」

寝室に入るなり、シャールカーンは彼女を後ろから強く抱きしめて囁いた。


「なぜ逃げた?」


少し声が低い。

まさか怒っているのだろうか。

緊張や不安、喜びがないまぜになってドキドキと鳴る胸の音を意識しながら、サフィーアは起きたことを正直に話した。

「逃げてないわ。朝、目が覚めたら自分の部屋だったの。私だって驚いたのよ」

「なら、なぜ君は奴隷商人と一緒にいたのかな?説明できる?」


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