不機嫌な果実
4.不機嫌王子と天敵
昨晩は、夜通し泣いたせいで、目は真っ赤。

腫れて、見れないくらいになっていた。

…学校、サボっちゃおうか?

そう思ったけど、お母さんに心配かけたくないし、

制服に着替えて、朝ご飯も食べずに、家を飛び出した。


「行ってきます」

「桃子、ご飯は?」

「いらな~い」

…いつものように、テンション高く、明るい声で。

家を出た瞬間、作り笑いは、一気に消えていた。



「…ひで―顔」

「・・・うるさいよ」

門の所で、顔を歪ませ、そう言った凌也。

私は可愛くない言葉を発し、目を逸らす。


グイッ。

そんな私の手首を掴んだ凌也は、学校とは反対側に歩き出した。


「ちょっと、凌也?!」

…ピタッと、私の声で、足を止めた凌也は、

こちらを見ようともしないで。


「そんな顔で、恭治に会えんの?」

「・・・」

そう言われ、返す言葉もなかった。
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