齧り付いて、内出血
Ⅴ.齧り付くのは、

パタン…

ドアが閉まる音がして、それと同時に気まずい沈黙が流れた。

一歩、また一歩、と久世がゆっくり近づいてくるのが、床のきしむ音でわかる。


「頼。」

ぐい、と手首を引かれて、部屋の中に連れ戻された。


どうしよう。
素直になろう、なれるって思ったのにやっぱり…。


「鍵は閉め忘れるな、人間は拾うな…と説教してえのは山々なんだけど、とりあえずこっち見ろ。」


顔を上げると、久世の薄茶の瞳に小さな自分が弱弱しくうつってた。

だめ、もっとしっかりするんだ。

ちゃんと、言う。


言いたいことを言えない私なんて私らしくないのだから。


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