嘘つきな唇
偶然じゃないって言ったらどうします?
「そうかそうか、知り合いなら藤村くんに任せておけば大丈夫だな」

ガハハと豪快に笑いながら「昼を食いに行く。あとは任せた」と言って部長はさっさと社員食堂の方へ歩いていってしまった。

••••微妙な空気を残して。

紗綾は恨みをこめて部長の背中をジットリと見つめる。

いろいろ気まずくて振り向けないというのが本音だけど。

「••••驚いたな。同じ大学出身だとは知っていたが、まさか知り合いだったとはな。
世間は狭いな」

蒼士の言葉に仕方なく振り向く。
心の中でため息をこぼしながら。

「あお、•••課長」

蒼士はまだ混乱の中にいたが、それでも顔には出さず努めて冷静に話そうとしていた。

ただ、気になる。

さっきの紗綾の表情に違和感を感じていた。
どうにもただの知り合いには思えなくて。

「本当に。偶然とはいえ、僕もびっくりしました。まさか紗綾先輩と同じ会社だとは思いもしてなかったですからね」

ニッと笑った目の前の新入社員を見て、紗綾はビクッとわかりやすく肩が跳ねる。

それを見た蒼士は思わず知らぬ間に眉間に皺を寄せてしまう。


















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