闇に響く籠の歌
幕間
『かごめの歌って知ってる?』


『知ってるよ。か~ごめ、かごめっていうあれでしょう?』


『そうそう。じゃあ、それの意味は分かる?』


『えっと……かごめって籠女でしょう? お腹の大きい女の人?』


『よく知ってるね。じゃあ、籠の中の鳥って?』


『赤ちゃんのことでしょう? 籠が女の人のお腹で、そこに入ってるんだもの』


『凄いな。そんなことも知っているんだ。じゃあ、夜明けの晩って?』


『夜が明けきる前のこと。どっちかっていうと夜よりの時間』


『凄い~ そんなことまで知ってるの? わたし、バカだから知らなかった』


『え? 常識じゃない? 違う?』


『それだけ、好奇心が旺盛なんだよね。それっていいことだよ』


『ホント? 褒められちゃった。ありがとう』


『どういたしまして。じゃあさ、後ろの正面ってわかる?』


『難しいよね。でも、こう考えたらどうだろう』


『ん、分かるの?』


『後ろの正面って考えるから難しいんじゃないかな。後ろに正面があるって考えたらどう?』


『なんだか、言い方だけを変えてるみたい。意味あるの?』


『あると思うよ。えっとね、かごめっていうのは籠女なんでしょう? で、その人は妊婦さん』


『うん、そうだよね。それは分かる』


『じゃあ、その妊婦さんの後ろに顔があるっていうのは?』


『それって、後ろに誰かがいるってことだよね?』


『うん。だよね』


『ねえ、その前にある鶴と亀が滑ったってどういうことだろう』


『滑るんでしょう? あんまりいいことじゃないような気がするわよね』


『うん……ねえ、ひょっとして、妊婦さんの後ろに人がいるってことは……』



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