今日は、その白い背中に爪をたてる
不審な背中
「お疲れ様でしたー。」



「はい、お疲れ様。」



撮影が終了したのは午後9時だった。


後片付けをする私の背中にスタッフが声をかけて次々に帰っていく。


やはり大手の会社の写真撮影となると一日がかりになってしまうので、結構な疲労感が全身を襲っていた。


それでなくても昨夜は睡眠不足なので(誰のせいかは敢えて言うまい)早く帰りたい。


ノーパソで画像チェックをしてカバンにしまい、スタジオの隅に置きっ放しの荷物を取りに行く。


今日のSATOMIはいつになくセクシーだった、満足満足。


皐月に言われたコンセプト通りにいい写真が撮れた。


今回は夏の新作グロス、テーマは『貪りたくなる唇』だ。


なんとも大人な発想であるが、OG化粧品は結構大胆なことをするのが発展した理由なのだ。



「あの写真を推そう。」



薄く唇を開いて人差し指を当てたポージング。


あれをバーンとでっかい広告にして横に一言セリフをつければ売れること間違いなしだ。


そんなことを考えながら脱いでいた濃紺のシャツを着て、スニーカーをパンプスに履きかえたところでホッと息が漏れた。


これをすると仕事終わった!!って気になるなあ。


仕事の間は被写体に集中したくていつも上はシャツ一枚、スキニーパンツにスニーカーというスタイルの私。


ちなみに全てUNIQLOである、シンプルで安いところが大好きだ。


シャツととパンプスは一応ブランド物ではあるが、基本あまり自分のことにお金をかけない主義なので給料の殆どはカメラ関係に飛んでいく。


外国へ行くこともしばしばだし、職業柄ヒラヒラスカートにバッチリメイクというわけにもいかない、シャッターチャンスをみすみす逃してたまるか。
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