狂々にして仄暗く
六、救済の代償
魔女と呼ばれる女たちの首を、その役人は何の躊躇いもなく刎ねていく。
通算百人目の時、役人の手が止まる。
百人目の女は、役人の初恋の相手であった。
幼き日に告白し、断られて以来会っていなかったが、女は更に美しくなっていた。
役人の手は止まったままだ。助けてと懇願する女は、自分のことを覚えていないらしい。
魔女と呼ばれた者を処刑しなければ、自分の首が刎ねられる。
役人は迷い、考えた末に、女を助けた。
二人で逃亡し、追ってがあろうものならば、役人は身を呈して女を守った。
逃亡の末、どことも分からぬ土地で事なきを得た後、役人であった男は言う。
「お前の命を救ったのだから、お前は一生、俺の言うことを聞け」