狂々にして仄暗く
七、帰るべき家

夕暮れ時の公園。
子供たちの帰る姿を青年は見送る。

その中に一人だけ、ブランコに乗ったままの男の子がいた。

君は帰らないの?
青年は聞く。

なんで、みんな、かえりたいと思うの?
子供は聞き返す。


家でお母さんとお父さんが待っているからだよ。
青年はブランコを押し、答える。


だから、わかんないんだ。
子供は答える。


家に帰りたくないんだね。
青年は子供を抱っこし、笑顔を浮かべる。


帰ったら、ぶたれるの。
子供は青年にすがりつく。


それはいけないなぁ。
青年は、子守歌を口ずさみながら、歩き出す。


帰りたくないの。
寝息を立てる前に子供は言う。


寝入った子供を抱きながら、青年は公園を去る。子供はおうちに帰らなきゃダメだよ、と子供の家に向かう。


「起きたら、ただいまって、言いたくなるような家になっているよ」

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