12 love storys
【June】 試着室のkiss
「そうねぇ、15は止めてよ。
自分の誕生日は不味いでしょ?」


「どういこと?」


「どういうって、万が一、離婚でもしたら嫌じゃない?一生思い出しそうじゃん。」


「何それ、結婚前から離婚とか言うなよ。縁起でもない。じゃあ、前週の8日ね、この調子だと少しでも早く君を捕まえとかないと逃げられそうだからね。」


と、俊介は几帳面に黒皮の手帳に結婚式の日取りを書き込んでいた。


私と俊介は付き合って10年になる。
来年の6月に結婚することが決まっている。
所謂、ジューンブライド。


そして、遡ること半年前。
両家の顔合わせをきっけに、
同棲することになった。


どちらも若くないんだし、経済的にも良いから早く一緒に住んじゃいなさいって、何なら先に孫の顔でも……と、両家の親同士が盛り上がって一緒に暮らしだした。


それまで以上に一緒に過ごす時間が増えた私達はより、お互いの理解を深めた。


なのでーーー
いくらひねくれものの私でも本気で結婚前から離婚の事なんて考えているわけもなく……。


楽しみな事ほどひねくれた答えを私が言うことなんて、俊介にはお見通しだった。


「ねぇ、衣装合わせなんだけど……俊介やっぱりダメなの?」


「ああ、ごめん、やっぱその日、無理みたい。
スマホで撮って送ってよ。仕事の合間に確認するから。ねっ?」


「そうなんだ……。でも、あなたの分はどうするのよ?タキシードは?」


「そうだなぁ、君が適当に何点かピックアップしてよ。後で僕がどれか決める。」


「……わかった。おもいっきり、ダサいの選んであげるんだからっ。」


「そうだね、僕はあくまでも引き立て役だから、お姫様。」


と、わざとらしく手を差し出す俊介。
本当は私がちゃんと選ぶの分かってて、そういう事を言うんだから……。
結局、俊介の方が一枚も二枚も上だ。


せめてニヤケた顔だけは見られないように少し俯きながら私は俊介に身を委ねた。






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