素顔のキスは残業後に
第2章 偽りのキスと曖昧な終止符


ランチタイムで賑う社員食堂で、総務部の2つ後輩の美香(ミカ)ちゃんとランチを取っていると、向かい合って座る彼女がそわそわと落ち着きなく姿勢を正し始める。

いったい、なにごと?

美香ちゃんの視線を追って振り返ったら、食堂の入口に柏原 柊司が立っていた。

すれ違う女子社員達が俯いてしまうほどの端正な顔。
涼しげな瞳が食堂を見渡して私を捉えると、一昨日の夜に意地悪ばかりを言っていた唇が引き上がる。

何か言いたげな表情でこちらに歩み寄って来た彼は、私と美香ちゃんが座るテーブルをトンッと指で弾いた。

「悪いけど。桜井に話あるから、借りていい?」

どこかしたたかさも感じる艶のある笑み。
そんな想いが垣間見れるそれに、ほとんどの女子は一瞬でやられてしまうんだろう。
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