解けない恋の魔法
特別で大切なもの
 宮田さんが適当においしそうなお料理をお皿に取り分けて、私にそれを手渡してくれた。
 こんな豪華すぎるパーティに来たのも初めてならば、男の人にこうやってお料理を取ってもらうことも初めてだ。

 私に一目惚れをしていた、みたいなことも言われたし……
 先ほどから緊張とドキドキで、どうにかなりそう。

 だけど浮き足立ってばかりはいられない。
 お皿はきちんと持って、こぼさないように注意しないと。
 私の不注意でこのドレスを汚してしまうことだけは避けなければいけないから。

「このお肉にかかってるソース、おいしいよ」

 隣に居る宮田さんは、無邪気にそんなことを言いながらお肉を頬張る。
 つい先ほどまで照れていたのに、今はもう何食わぬ顔だ。
 私もそろそろ、意識しすぎるのは疲れるからやめよう。

 ひとつ大きく深呼吸をして、何気なく会場内を見渡したときだった ―――

「…………え……」

 私はとある一点を見つめたまま、動けなくなってしまった。



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