鬼部長の優しい手
変化と謝罪禁止令



都内の少しこじんまりとした
お洒落でベーシックなカフェ。


私の前には20代前半の
若いカップル。
彼女の方は、長い黒髪を
後ろで縛った、大人しそうな女性。

彼氏の方は短い髪がよく似合う、
爽やかな好青年という感じの男性。




小さな机に広げられているのは、
愛用しているノートパソコンと
様々な式場、ドレス、コース料理の
パンフレット。





…一人では人生初の、
お客様との打ち合わせ…




向き合って座ると、より一層
緊張しちゃう…

って、なにやってんだか、私。
結婚式の主役は、このお客様
それをバックアップするのが私の
仕事なのに、私が緊張してどうするの





私は自分に、そう言い聞かせ
資料に向けていた視線を、目の前の
カップルに向ける。







「あ、あの
こんな感じにしたい!とか、
式場の雰囲気とか…

あと、ドレスや参列者に出すお料理とか
なにかイメージなどはありますか?」





私は甘噛みしながらも、お客様に
そう質問する。




…返答を待つ数秒の間も
緊張と不安で鼓動がドンドン大きくなる。


だめだめ、こんなことしてちゃ
お客様に不信感を与えてしまう。

このプランナーで大丈夫なの?
とか、思われてたら多分私、当分立ち直れなさそうだし…








このプランナーで大丈夫!って
思われるくらいにしないと。






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