鬼部長の優しい手
お誘いと聞き取りずらい低音ボイス




6月21日


一回目の、お客様との打ち合わせが
終わって二日が経った今日は、
いつも通りの書類整理。


私は黛実の後ろのデスクで
なんとか集中力を保って、パソコンに
向かっている。



次の打ち合わせは
四日後だったかな。
その日はスタイリストさんと、
メイクさんを呼んで、衣装会わせと
式場の見学案内……



わかりきってたことだけど、
やっぱり、しんどいなぁ。

当日は立ちっぱなし作業だし……



なんて、
愚痴ばっかり言ってたって仕方ないよね。
だいたいお客様は、結婚式っていう一大イベントを、
私に手伝わせてくれてるんだから、しっかりしなきゃ。


そうやって自分に言い聞かせ、
パソコンの前に向き直ったとき、


「涼穂、涼穂!」


「何?黛実、どうかした?」


さて、書類整理に戻ろうかと
液晶画面を睨み付けたとき、
後ろのデスクの黛実に声をかけられた。


「あんた、塚本部長とご飯行ったって
本当?」


「え?」



な、なんで黛実が知ってるの!?



黛実の突然の言葉に
分かりやすく体が反応する。



「そ、それ
いったい誰から聞いて…っ」




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