愛してもいいですか
3.星だけが知っている



幼い頃から父は、私を“社長の娘”としてというより、“普通の子供”として育てた。

小学校や中学校は受験なしの近所の公立校。お小遣いも月に二千円、高校生からは自分で働いて稼ぐようにと、贅沢は教えずに。



そんな教育のおかげで、私は黙っていれば親の職業なんてバレなかったし、世の中にいる俗にいう“お嬢様”といった感覚は持たなかった。

だけどなんとなく、いつか自分も社長になるんだろう。それなりに頑張ればいいだろうと思っていた。

そんな私を、周りの大人は『残念』だと言った。



『架代ちゃん、一人っ子だから将来は跡継ぎね。それかお婿さんでも貰うのかしら』

『でもお父さんもきっと、男の子が欲しかったでしょうに……残念よねぇ』



私が男じゃないから。女の私が跡を継ぐには力不足で、婿を貰わなければならないから。だから『お父さんが可哀想』、そう何度も、何度も。



十五歳のある日、勇気を出して父に聞いたことがある。『私が男の子じゃないから、がっかりした?』って。答えを聞いたところでどう出来るわけでもないけれど、子供の興味とは恐ろしいもので、ただその本音が聞きたかった。それだけだった。

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