幸せの花が咲く町で
◆香織

手の届かない幸せ





(なんだか……慌ただしい一日だったけど……楽しかったな……)



私は、布団の中で今日起きたことを思い出していた。



あの時は本当にびっくりした。
いつも来られてるお父さんが、お迎えに来られてないからどうしたんだろうって思ってたら、それからすぐに来られて……それをみつけてお子さんが走り出されて……
そこに車が来たから、私は夢中で駆け出して……
私にあんな勇気があったなんて意外だった。
あの時は、とにかく考える間もなかったから、本能みたいなものだったのかもしれない。



お父さんは余程驚かれたのか、青い顔をして倒れてらっしゃって……
それは、体調が悪いせいだったかもしれない。
とても放っておけない様子だったから、私は二人をお送りすることにした。
そこは、このあたりでも大きなお屋敷が立ち並ぶ一角で、お二人のお家は日当たりが良くとても素敵なお家だった。
広いお庭には花が咲き誇っていて……まるで天国みたいで……
絵に描いたような幸せな家族だと思った。



家の中もとてもきれいに片付いていて、品の良い家具が並び、綺麗な花が飾られていた。
ただ、小太郎ちゃんのお部屋だけは少し散らかっていたけれど、そこ以外はどこも几帳面に片付けられていた。
特に驚いたのは台所だ。
引き出しの中も、冷蔵庫の中もきちんと整理され、どれも使いやすく配置されていた。
奥様の姿はお家にはなくて、それを考えると、奥様はやっぱり入院されてるのかしら?と思ったりしてたけど、小太郎ちゃんが、ママはお仕事だと教えてくれた。
どうやら、奥様が外で働かれて、旦那様が家事をするスタイルを取られてるらしい。



今日は、最近ではずっとしたことのなかった料理も作った。
料理とはいっても、パンケーキを焼いたのと、オムライスと豚の生姜焼きと、ちょこっとしたものを作っただけ。
だけど、久しぶりに料理を作るのはけっこう楽しかったし、あんなに広くて気持ちの良い台所で作業するのはやっぱり気持ちが良かった。
それに、なんといっても小太郎ちゃんと奥様がものすごく喜んでくださったのが嬉しかった。
おいしいって言いながら、もりもり食べきって下さって……あんな風だと毎日でも作りたくなってしまう。
あ……奥様は、私の予想とは全く違うタイプの方で…見るからに華やかで、すごく元気で明るいサバサバした方だった。
旦那様とのやりとりを見てても、かかぁ天下だっていうのがすぐにわかった。
旦那様は、どこか繊細な感じがするおとなしいタイプだから、あんな風にしっかりした方の方が合うのかもしれない。
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