天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
イミテーションの過去
 本日の営業時間が終了し、あたしはお店のシャッターを閉めた。

 昔はシャッターなんて無かったから外から覗き放題だったのに。

 防犯上、やむを得ないよね。世知辛い世の中になったもんだわ。


 さて、今日は皆で残業してダイレクトメール書き。

 お客様には常に真心を込めて! が、我が五百蔵宝飾店のモットー。

 なので宛名はぜーーんぶ手書き。しかも……


 毛筆で!


「はい、これで書いて」って筆ペンを渡された時は、目を丸くしてしまった。

 本格的な毛筆よりも文字を書きやすいらしいけど、使い慣れていないことには変わりない。


「やだもう、信じられない! 今どき手書き!? しかも筆!?」


 って詩織ちゃんがギャーギャー喚いて、栄子主任に叱られてる。

 あたしも自分が書いた宛名を見て、その出来栄えの情けなさに溜め息をついた。


「ねぇ聡美ちゃん、筆、使えるー?」

「全然。こんなのお客様に送ったら、逆に営業妨害になりそう」

「あたしもー。どーしよー」

「二人とも、社会人なら筆も使えないと駄目よ」


 あたし達の会話に栄子主任が参入してきた。

 詩織ちゃんが唇を尖らせて反論する。

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