彼氏人形(ホラー)
実家
蒼太と2人で電車に乗ると若い女の子たちの騒ぎ声が聞こえてきた。


「ねぇ、あの人すごくカッコいい!」


「本当だ。隣の人って彼女かな?」


「えぇ~不釣り合いだよ」


そんな遠慮のない会話と共に、笑い声が聞こえてくる。


あたしは改めて蒼太を見た。


背が高くスラッとしていてスタイルもいい。


当然のようにカッコいい顔をしている。


これが、あたしの理想的な異性だった。


それが立体化したのを見たとき、恐怖と同時にグイグイ引き寄せられる感覚がした。


蒼太が甘い言葉をくれるたびに胸がキュンッとして、恋そのものの感覚を味わうことができた。


でも……。


あたしは折られた腕に視線をやった。


蒼太は本当の人間ではない。


【彼氏人形】としても、欠陥品だった。


あたしはうつむき、キュッと唇をかんだ。

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