天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
真珠のように、痛みを内に
 家に帰ってさっそく、あたしはエメラルドの指輪を指にはめてみた。

 うーん、多少キツイな。でもまあそれは仕方ないか。

 もちろんサイズ直しもできるけど、切断したりなんだりの作業を指輪に加えたくない。

 この指輪は特別な指輪なんだもの。このまま、手つかずのままがいい。


 はめた指輪を上から眺めたり、下から眺めたり、左右から覗き込んでみたり、様々な角度からたっぷりと堪能する。

 もう、減るんじゃないか? ってくらい眺めたけど、全然飽きない。



 うぅ、顔がニヤケてしまうのを止められない!

 指輪ってスゴイ存在感を発揮するんだなぁ。これひとつを指にはめるとはめないのとでは全く違う!

 あぁ! か、顔が……顔があぁぁ~~!


 透き通るグリーンの輝きを纏った自分の指を見ていると、なんだか自分自身がグレードアップしたような気になってくる。

 心がウキウキと華やいで、劣等感で充満しているあたしの内部に自信が生まれてくる。

 凄いな。これが宝石の持つ力なのね。まるで魔法みたい。

 この指輪は一生大切にしよう! あたしの宝物よ!


 次の日あたしは、このエメラルドの指輪を身につけて出勤した。

 自宅に保管したまま指輪と離れ離れになるのが寂しかったから。

 といっても指にはめるわけじゃなく、例のプラチナネックレスに通してペンダントトップみたいに首から下げて。


 だって指にはめたまま仕事をすると、エメラルドに傷がつきそうで恐ろしくてたまらない。

 リング部分がツヤ消し加工じゃなくてツルツル光沢してるから、ウッカリ傷がついたらすごく目立つ。

 そうなったら立ち直れなくなりそうだった。
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