魅惑の果実
第十話 世間は狭い
次の日目を覚ますと、大きなベッドの上に一人きりだった。


時計を見ると朝の九時。


休日だっていうのに桐生さんってば、相変わらず起きるの早い……。


むくっと起き上がると、手に痛みが走った。


赤く腫れてる。


思った以上に力がこもってたみたいだ。


本当にどうしよ……。


私がどんなに抵抗しようと、正直父親の権力に敵う気がしない。



「おはよう」



リビングのソファーに腰掛けて、朝のニュース番組を見ている桐生さんに後ろからだきついた。


まだセットされていないさらさらの髪の毛。


気の緩んでいるこの感じが好き。



「腫れたな」

「あーうん。 自業自得だよね」

「全くだな。 直ぐに感情的になるのはお前の悪い癖だ」



ゔっ……ごもっとも過ぎて何も言えない。


感情的になったら損するのは自分だってわかってはいるんだけどね……。



「シャワー浴びてくる」

「昼食は外で摂ろう」

「本当！？ やったぁ〜！！ 急いで準備するね！！」



桐生さんにギュッと抱きつき、走ってバスルームに向かった。


桐生さんとお昼に出かけるなんて初めて。





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