ビター・スウィート
*4

変わる心





彼の胸で目一杯泣いたら、不思議と心が軽くなった。

気持ちを伝えられたことも、大きかったのかもしれない。



広瀬先輩に『好き』と言えたのも、思い切り泣けたのも、全ては彼がいたから。内海さんの存在が、あるから。

だからこそ今は、彼のための仕事がしたいと思う。





「最近ちー先輩、やる気すごいですねぇ」



ある日の午後。デスクで書類をまとめる私に、隣でパソコンに向かう菜穂ちゃんはぼんやりと呟いた。



「うんっ、やる気充分!どんな仕事も、どんとこーいって感じ!」

「ちー先輩、失恋したからって仕事に生きなくても……」

「別にそうじゃないけどね!?」



哀れみの視線を向ける菜穂ちゃんに否定をすると、書類を手に立ち上がる。



「よしっ、新商品の商品レポート出来たっ。内海さんに出してくる!」

「はぁーい。今日は叱られないといいですねぇ」

「うん!」



今までは、広瀬先輩への気持ちに左右されていたやる気。だけど今は自分から、あれもこれもしたいという気持ちがみなぎってくる。

悲しい気持ちを包み込んでくれた、そんな内海さんに認めて貰える仕事がしたい。ただ、その気持ちひとつ。



< 167 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop