星降る夜に。
♦越えられない一線
「莉子、お土産は何がいい?」
「うーん…美味しいチョコレートがいいかな」
「チョコって。ブランド物のバッグがいいとかないの?」
誠さんは苦笑いしながら私のショルダーバッグを指さして言った。
姉は独身のときに色々とブランドのバッグを買っていたから、今は私がそれを借りている。
「ないなぁ。お姉ちゃんに借りればいいし。あ、可愛いマキシワンピースがいいかな。お姉ちゃんとお揃いで」
「分かった。由衣ちゃんにもたくさんお土産買ってくるから」
今日は金曜日。
明日から誠さんは一週間、ハワイに行く。だからその前に食事に行かないかと誘われたのだ。
大輔さんには用事が出来たとメールをすると、一言だけ「分かった」と返信がきた。
寂しい気持ちになってしまった。
私の予定があるときは優先していいと言われていたし、むしろ当たり前のことなのに。
「帰ってきたらミラクルジュエリーに行ってみない?そろそろ指輪も決めておかないといけないし」
思いがけず出たその店名にドキッとする。