涙ドロップス 〜切なさを波に乗せて〜
波に散った夢
 


 ◇◇◇


夕凪はそのまま入院となった。


ここは学校からそれほど遠くない総合病院。


2階の個室で、一晩夕凪に付き添っていた。



あちこちガーゼと包帯だらけの姿は、痛々しい。



夜中夕凪は、浅い眠りにまどろみながら、

「左足が痛い」
と何度も口にした。



その痛みは“幻肢痛”

失った左足の膝から下が痛いと、呻いていた。



幻肢痛に、鎮痛剤は効き目がない。


痛みをごまかす為に睡眠薬で眠らせているけど、

うわごとのように
「左足が……指先が……痛ぇ……」
そう呟いていた。



恐る恐る、ガーゼで覆われた患部に触れてみる。


ゆっくり撫でてあげると、苦しそうな表情が幾らか和らぐ。



再びウトウト、眠りに落ちる夕凪。

眠りと痛みを繰り返し、

私は患部をさすりながら夜を明かした。



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