重なり合う、ふたつの傷
兎と森のカフェ


放課後、天野くんが『兎と森のカフェ』というお店に連れていってくれた。

ものすごく居心地のよいカフェで、気分が安らいだ。


ゆったりしたソファー席。


レモン色に輝く照明。


ゆっくり流れるBGM。


視線の先には森をイメージさせる観葉植物がある。


「ここならリラックスできるだろ」


天野くんはお姉さんに連れてきてもらったのがきっかけでここを知り、それ以来、よく通っているそうだ。


「こんなお店あったんだね」


お店のマスターが「ごゆっくりどうぞ」と置いてくれたコーヒーカップの中には、うさぎさんがいた。


「これ、前にテレビで見たよ。デザインカプチーノ」


「なーんだ、知ってたのか」


「知ってたけど、すごく嬉しい。かわいい」


カプチーノの泡にココアやチョコレートシロップで絵を描いてあるのがデザインカプチーノ。


テレビで見たのもかわいかったけど、実際に見ると更にかわいい。


薫りも豊かで飲むのが勿体ないような、早く飲みたいような。

そんなふたつの思いがカプチーノに溶けた。



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