赤い流れ星3
side 野々村美咲




(い、行くわよ!
行ってみなくちゃ、何もわからないんだから…!)



私は門の前で大きく深呼吸をして、人差し指をボタンに向かって突き出した。
ぶるぶると震える指が、どうにかインターフォンのボタンを押しこみ、モニターにはアッシュさんのにこやかな顔が映った。



「こ、こんばんは……の、野々村です。」

アッシュさんは私のことを覚えてらっしゃるのだろうか?
びくびくしながら、私はカメラの方に顔を向けた。



「いらっしゃい、野々村さん。
お待ちしてました。」

「あ…ありがとうございます。」

アッシュさんの変わらない態度に、私はほっと胸を撫で下ろした。
良かった…アッシュさんも私のことを覚えていて下さった。
……でも、考えてみれば、それは当たり前のことで…
だって、青木さんが私の事を覚えていて下さったってことは、アッシュさんやマイケルさん達も覚えて…
いえ、「覚えてる」っていう表現は違う。
私は、変わらずこの世界にいたんだから、私のことを「知ってる」っていうのが正しいのかもしれない。
つまり……あの時、美幸さんとシュウさんがあの門をくぐったために、こちらの世界では美幸さんとシュウさんがいなくなった五年間が流れてた。
だけど、再び、お二人があの門をくぐってこちらに戻ってこられた途端、シュウさんがこっちの世界に来られなかった五年間に切り変わった…多分、そういうことだと思う。
あれ…?でも、シュウさんもあの門をくぐられたんだ…
だったら…どうなるんだろう?
またあの時の繰り返し?
でも、お二人は門を動かすエネルギーに変換するため、あっちの世界での記憶をなくされた。
だから、こっちで出会ってもお互いにわからない筈…だったら、シュウさんはどうなるんだろう?
前よりも困ったことになるんじゃないの?
あ……もしかしたら、二人が記憶をなくしたことが、こっちの世界にもなんらかの影響を及ぼしてるのかしら?
でも、それならどうして私はすべてを覚えているの!?



「野々村さん!野々村さんってば!
どうしたんですか!?」

「え……?
あ…あぁ…す、すみません!」

アッシュさんは、私を見て呆れたような笑みを浮かべてた。
恥ずかしくて顔が熱くなる。
考えたところで答えが出る筈もない。
とりあえず、今は美幸さんや青木さん達の様子を見て、状況を確かめなくては…!
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