音楽が聴こえる
3.交渉人

side 茉奈

◇◇◇
「どういうことか、理解しかねるんですけれど」

昼休み、国語科の教務室に予期せぬ訪問者が現れた。

お弁当を食べようした途端の斉賀純也なんて。

間が悪いったらありゃしない。

お腹減ったのに。

「だから、じ…香田先生。この間来た時、少しぐらい見ただろ」

ライヴハウスと言い難いのか、主語が抜けてるけど。

「私は何も、見ておりません」

「うっそだー地味先、悟さんと話してたじゃねぇかよ!!」

地味先だとぉ?

本人目の前にして、こいつ良い度胸してるじゃない。

「斉賀クン、君の見間違いではありませんか? それに今は、お昼御飯の時間ですよ」

あたしは邪魔だと言わんばかりに、机の中からお弁当を取り出した。

「俺さっき食べたから、まだ腹空いてねーし。先生は食べてて良いから、生徒の話し聞ーてよ」

斉賀は『生徒』をやたら強調してあたしを断りにくい状況に陥らせる。

彼は殆ど使われることのない、右隣りのじーさん先生の椅子へドカリと腰を下ろした。
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