鬼部長の優しい手
後悔とあいつの泣き顔 side塚本




二日前、五年ぶりに風邪をひいた。
その日、七瀬を泣かせた。

目は赤く腫れていて、
声は震えてた。
出ていけと怒鳴る俺に、完全に
怯えきっていた。


…だけどあいつは、


「一人で全部、抱え込まないでください」

「部長が話してくれるまで
私、諦めませんから!」



そう言って強い視線を俺に向けてきた。
その視線から逃げるように、
俺は慌てて家に引き返した。



…七瀬、体が震えてたな。
当たり前か。俺があいつを
泣かせたんだ。

俺が大切に思った女性を、
俺はいつも傷つける。






「はあ…。」


仕事中だと言うのに、さっきから
ずっとでてくる溜め息。



…七瀬は今日、打ち合わせだったか。




あの日から、俺は七瀬を避けている。
目もあわせていない。
周りからみても、わかりやすいくらいに。




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