いろはにほへと
トモハルの正体
しとしとと、夜の雨が降っている音がする。



いつの間にか、絨毯の上に座り込んで、眠ってしまっていたらしい。



私は固まった身体を伸ばし、足の痺れがなくなるのを待った。





何時だろうか、と掛け時計に目をやると、時計の針は12時で止まっている。



この屋敷にちゃんとした時計は、ほとんどなかったんだ、と思い出し、苦笑した。





恐らく、一時間くらい眠ってしまっていたのではないだろうか。





カチャ、とドアノブを回し、廊下ごしに外を覗くと、予想通り静かな雨が降っていた。





柱に寄りかかり、何とも言えない気持ちで、それを眺めていると。







「あ、ひなの。」




「!」





こんな広い屋敷だというのに、たった一人の同居人に直ぐ見つかった。





トモハルはちょうど離れから出て来た所らしく、案外近くに居たようだ。




振り返って見ると、タンクトップから出ている両腕が、少し涼しい今の空気では寒いのではないかと思わせる。





「さっきはごめんね。」




「・・・・」




何に対してかわからないが、トモハルの口から謝罪の言葉が出てくる。



彼の目はいつもと変わらず穏やかだ。






「私―…」




寝起きでぼんやりとした私の頭は上手く働いてはくれないが。






「暗くて、地味で、薄くて、…ブスなんです。」






口数だけは、いつもより増やしてくれる。

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