詐欺師の恋
嘘の反対側

―『カノンちゃん、今日会える?』





そう言って、タカが指定した場所は、私の家の近所にある、小さな公園だった。



正直、ルナにはもう行きづらいと思っていたし、行かないと決めてもいたので、助かった。



タカは少しだけでいいと言っていたので、私も気楽に構え、仕事帰りにお弁当なんか買って、その足で公園に向かう。




猫の爪みたいな月が夜空に出ている。



腕時計を確認すると、時刻は8時を回った所だった。




「…こないだのこと、かな」




タカがこれから私に何を話そうとしているのか考えると少し憂鬱な気持ちになる。




タカの所に戻らなかったことで、私が中堀さんと良くも悪くも接触できたことは分かっているはずだ。




中堀さんから何か聞いているかもしれない。



そこまで考えて、ふとある事を思い出した。




―そういえば。中堀さん、こないだタカと会ったかって訊いてきたっけ。




結局、なんだったんだろう。


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