詐欺師の恋
帰らない理由
気が付けば、腕時計の針は0時を過ぎていた。




「毛布、持ってこなくっちゃ…」




室内は、暖房が効いてきたため、大分暖かい。



すやすやと眠る中堀さんから目を放し、そっと立ち上がる。



じんじんするおでこに指先で触れてみてから、すぐさま隠すように前髪を直した。




「毛布、毛布っと」


玄関にある自分の荷物を一瞥して、階段を上る。





真っ直ぐ寝室に向かって、ドアを開け、電気を点けると。






「やっぱり…」





家に着いた時に感じた違和感。



冷蔵庫を開けた時に感じた違和感。




そして今。



寝室に入って、同じ種類の違和感を感じている。





先日私が中堀さんの家に来た時、うっかりソファで眠ってしまったのに、朝起きたらベットに運ばれていた。




中堀さんがどこで眠ったのかは知らないけれど、私が目を覚ますよりずっと早くに起きていたようだった。




現に、リビングでコーヒーを飲んでいたから、ソファで寝たのかもしれない。
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