夢のような恋だった

目に当てていたハンカチは、気づいた時には全体的に湿っていた。
散々泣いて、ようやく落ち着いてきた私は大きく息をついた。久しぶりの大泣きで体全体がだるい。


「実家に帰って来れば?」


そう言ったのはサイちゃんだ。


「あの彼氏、なんか危険だし。ねーちゃん一人だと心配だよ」

「……そうだね」


でも、草太くんがあんな風に怒るのは当然かもしれない。

確かに私は彼を詰って、だからこそ彼は変わろうとしてくれたんだもん。
そうなってから気持ちを受け止めないのは私のほうが悪いんだろう。


「……悪くないよ?」


琉依ちゃんが私の顔を覗きこんで言う。


「え?」

「紗優ねーちゃんは悪くないよ。なんでも背負ってそうだよね。あの人のことも自分が悪いって思ってそう」


なんで分かるの。
そんな思いを込めて彼女を見つめると、琉依ちゃんは軽やかに笑う。


「この間、話聞いた時思ったの。紗優ねえちゃんって、何でも自分のせいって思うんだなって」

「そんなこと」

「あるよ。お兄ちゃんと別れた時の話だって、別に紗優ねえちゃんだけが悪いわけじゃないじゃん。お兄ちゃんにも余裕がなさすぎなんじゃん」

「でも」

「ああもう、でもじゃないのー! 結構頑固だよね、紗優ねえちゃんって」


琉依ちゃんがふくれっ面をして拗ね始める。
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