イージーラブじゃ愛せない
●交換メモリーズ●

●交換メモリーズ●



「なんでこんなのがいいかなあ?超キザ男じゃん」

「うるさい。王子社長の悪口言ったらその口縫い付けるかんね」

「えー。だったらこっちの課長の方がカッコ良くね?」


とある休日の昼。いっしょにシフト休を取った胡桃が俺の部屋で観ているアニメのDVDに、俺は大人気なく意見を述べる。


「あーもーうるさい。やっぱ家に帰って静かに観ようかな」

「えっうそ、ゴメンなさい。大人しくしますー」


せっかくふたり揃ってシフト休が取れたと云うのに。デートに誘ったら胡桃はなんと『新しく出たアニメのDVDを観るから行かない』と言う理由でお断りしてきたのだ。信じらんねー。

『俺よりアニメが大事なの?』って質問に一秒たりとも迷わず『うん』って答えた胡桃は本当にイッツクール。

それでも一緒に休日を過ごしたい俺はなんとか彼女を説得して“俺の部屋でDVDを観る”と云う約束にまで漕ぎ着けたけど。


胡桃が大好きなそのアニメ、やたらイケメンでキザい男ばっか出てきて何がいいのか分かんない。なんでこんなのが俺よりいいの?なんでキザい台詞ばっか言ってる社長にウットリしてんの?そんな乙女な表情、俺には向けてくんねーのに。


馬鹿らしいって分かってるけど。
俺、今、かなりマジで妬いてます。
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