野良の明日
迷子と放浪
ある日、ある時
俺の不運の始まりは、些細なきっかけからだった。
その日は、昼から雨だと、天気予報が言っていた。
だから俺は野球部の中練を休んで病院に行く予定だった。
しかし、どう間違えたのか、雨なんて一滴も降らず、昼休みをむかえたところで、太陽が燦々と照り付ける始末だ。
「…うわ、晴れてんじゃん」
向かいの机で弁当を突いていた岩倉が嫌そうに言う。その視線の先は俺がさっきまで見ていた晴れ空だ。
「ね。俺、用具一式家に置いてきちゃった」
外練だったら、休む気なんてなかったのに。惜しいことしちゃったな
「うわー何やってんだよ!おまえサボる気だったのか」
「恐ろしい子」およおよと泣く真似をする岩倉の頭を小突く。
いたーい。と岩倉が笑った。
「馬鹿言うなよ、試合近いってのに。俺はいつでもお前の後釜を狙ってるぞ!」
「ばっ、やんねーよ!」
岩倉が焦った様子でそう言ったとき、チャイムが鳴った。昼休みが残り五分になったことを知らせるチャイムだ。
俺は食べ終わった弁当を片付け、慌てて残りの弁当をかきこむ岩倉に水筒を差し出してやった。苦しそうな顔で飛びついてきた岩倉が可笑しい。
「ぷはーっ!さんきゅ、ママ」
「…誰がだよ。あ、こら、ちゃんと袋包みに入れてしまえ」
二度目のチャイムと同時に岩倉が去っていく。最後まで締りのないニヤつき顔だった。