恋をしようよ、愛し合おうぜ!
25
アパートに着くと、まずはクリスティーナが住む2号室へ行った。
そこには幸太くんとヒロミちゃん、そして川口さんもいた。
私が帰ってくると聞いて、集合したらしい。
悦子さんは今月いっぱいまで部屋を借りているけど、28日現在、すでに彼の家へ引っ越しを済ませている状態だ。
あっちにいた間、野田さんとは一度も連絡を取らなかったけど、アパートのみんな、特にクリスティーナとヒロミちゃんと悦子さんとは、週に一度は必ず連絡を取り合ってたので、そのあたりの事情は私も知っている。

でも、クリスティーナが川口さんと一緒に住むことになったなんて・・・。

「聞いてないよ!」
「そうねー。言ってなかったし。決まったのが急だったからね」

なんて涼しい顔して流暢な日本語で言ってるクリスティーナだけど、嬉しさは隠しきれていない。
でも・・・クリスティーナが川口さんのこと好きだったって、私、全然知らなかった!

なんでも、いつまでたっても次の物件を探そうとしないクリスティーナが、もし一人だけこのおんぼろアパートに最後まで残ることになったら・・・と思ったとき、川口さんはクリスティーナのことを好きだとハッキリ自覚したそうだ。
それで、すでに次の物件を決めて、着々と引っ越しの準備を済ませている川口さんのところに一緒に住む、ということになったそうで・・・。

「田舎の古い一軒家なの。“インテリアのことは全部任せる。好きにしていいよ”ってヒロが言ってくれて」
「そっか。じゃ、私のことがあったから、クリスティーナはなかなかここを動けなかったんじゃない?」
「ううん。それはなかった。心配しないで。それより、ナツもやっとノダと一緒になれるのね。よかった。おめでとう」
「ありがとう」

というわけで、みんなの幸せを祝して、ビールで乾杯した。
野田さんはこの後車を運転して帰るので、お水だったけど。

私たちは、クリスティーナの部屋に30分ほど滞在して、自室へ引き上げた。
野田さんは私の部屋前まで、初めて送ってくれた。

「気をつけてね」
「おう。後で電話してもいいか」
「うんっ。待って・・・る」

野田さんの顔が近づいた、と思ったら、私の額に軽く唇をつけた。

「続きはまた今度な」
「ぅん」
「じゃーなー」

私も晴れて独身となったから、野田さんとは正々堂々とおつき合いできる。
それは分かっているけど、やっぱり別れた直後に他の男性とイチャイチャというのは・・・。

そんな私の気持ちを野田さんも分かっているから、無理強いはしてこない。
でもそれとなく押してはきてる・・・というか、今まで抑えていた気持ちを、少しずつ表に出し始めているのかな。

なんて思いながら、野田さんの白い車が見えなくなったのを確認した私は、5号室へ入って行った。


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