巡り合いの中で
第四章 好奇心

 朝から、侍女達が騒がしい。

 その状況にアリエルは、何かあったのか尋ねる。

「違うわ」

「それなら……」

 侍女仲間から「敬語はいらない」と言われているので、アリエルは砕けた言い方を行う。

 アリエルからの質問に侍女の一人は、仲間の結婚が決まったということを伝える。

 そのことにアリエルは驚くも、いつも世話になっている仲間が幸せになることに、素直に祝福する。

「相手は、港で働いている人」

「確か、28歳よね」

「そうそう」

「かっこよかったよね」

「いいなー、あんな彼氏」

「私も、欲しい」

「で、アリエルは?」

 突然話を振られたことに、アリエルは何も言えなくなってしまう。

 彼氏がいるかと質問されても、知らない世界に来て懸命に頑張っているので、恋愛の方に目を向ける暇がない。

 アリエルは無言で頭を振ると、侍女仲間はどこか残念そうな表情を浮かべながら「可愛いのに」と、評する。

「……可愛い」

「うん。可愛いわよ」

「侍女服も、良く似合っているし」

「私なんて、スタイルを良く見せようとちょっときついサイズを……ダイエット、頑張らないと」

「でも、皆の方が……」

「謙遜しなくていいわよ」

「多分、着慣れているから……」

 そう言いつつ、アリエルは侍女服を眺める。

「そうね。アリエルって……」

「やっぱりアリエルの世界でも、こういう風に女同士で盛り上がっていたの? 特に、恋愛とか?」

 それに対し、アリエルはコクコクと頷く。

 たとえ世界が違っていても、女達が盛り上がる話題には共通点が見られる。

 また彼女が働いていたのは王宮なので、話題には事欠かない。

 そう語るアリエルに仲間達は「いいなー」や「羨まし」と言い、どんな話が面白かったのか聞く。


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