Sugar&Milk
カフェ店員と恋、始めました



会社の壁掛け時計を確認すると21時を過ぎていることに溜め息をつく。気が付いたらフロアにはもう私しか残っていない。
パソコンをシャットダウンして明日使う書類をまとめると書類の端が目に留まる。
『企画責任者:橘 朱里(たちばな あかり)』の文字に疲れを忘れて気が引き締まる。

入社3年目になってだんだんと責任ある仕事を任されるようになると残業も多くなっていた。ここ最近家に帰るのはほとんど寝るためのようなものだ。先輩たちが数年前から営業事務を採用してほしいと要望を出していても未だ実現していない。

再び溜め息をつくと疲労感が少しは抜け出ていく気がした。首から下げた社員証をフロア入り口のレコーダーにかざして会社を出た。

学生時代から憧れて入った業界の、大手とは言えないがやりがいを感じる仕事のできるイベント企画会社に入社した。
以前は片道1時間半かけて通勤していたけれど、去年会社が移転して自宅から30分で行き来できる。
こういう日は会社と家が近くてよかったと思う。自宅の最寄り駅から電車で4駅。急行が止まらないというのが難点だけど最高の環境だった。

駅の階段を上っていると、上から大きな段ボールを抱えながら下りてくる人が目に入った。段ボールは持ち主の顔が見えないほど大きく、それを上下に二つも重ねている。

あの箱が落ちそうで危ないな……。もし足を踏み外したら結構怪我しそうだし。

疲れた頭でぼんやり思ったときだった。段ボールを持った人が後ろから下りてくる人を避けようとするとバランスが崩れ、上に置いた段ボールを階段に落としてしまった。バサバサと大きな音が響いた。

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