10年越しのコクハク
10年越しのコクハク
男女の友情って信じる?

よく聞かれる定番の質問に、わたしはいつも『YES』と答える。

すると、だいたい返ってくる反応が、『えー!?そんなのあるわけないじゃん!』っていう全否定。

だったら、最初から聞くなっつーの。

わたしだって、適当に答えてるわけじゃない。

本当に、そういう人がいたんだから。

……高校生の頃にね。

「もう10年前のことか……」

「何が10年前なの?」

「えっ?あ、支店長!?いえ、なんでもないです」

独り言をしっかり聞かれていて、動揺してしまう。

仕事中だっていうのに、あいつのことを思い出してどうするのよ。

もちろん、わたしだって思い出したいわけじゃない。

むしろ忘れたいのに、こんなに頭から離れないのは、SNSであいつを見かけたからだ。

「加藤さん、急で悪いんだけど、昼からこの取引先へ行ってくれないかな?」

支店長がそう言って差し出した資料には、新しく取引先に加わった会社名が書かれていた。
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