スカーレット
スカーレット

ブラインドから零れた日光に当たって、埃がキラキラと宙に舞いあがっていくのが見えた。

どおりで鼻がムズムズするはずだ。くしゅんとひとつ、クシャミが飛び出る。

(そろそろ掃除しないと……)

滅多に人が来ないとはいえ、ここまで埃っぽいと滞在時間が数分でも身体に悪いだろう。

ああ、仕事熱心な自分を褒めてあげたい。

膨大な資料の整理と管理は総務部の仕事のひとつだった。

何もかも電子データでやり取りされる昨今では時代遅れの紙の書類達は用済みとされ、この薄暗い資料室に窮屈に押し込められている。

押し込められた側の気持ちをあえて代弁するならば。

……居心地はよろしくない。

「こういうことする男の人、嫌いなんだけど」

「そうなのか?忘れなかったら覚えておくな」

私の頭上20センチほどの高さの所で、佐伯はヘラリと笑った。

……あ、こいつ絶対、覚える気がないな。

ヒクリとこめかみを動かしながら睨みつけると、何を思ったか口元を掌で覆い隠され、シッっと声を潜めるように指示される。

何で私がこいつに付き合ってコソコソしなくてはならないのだ。間違っても従う義理はない。

< 1 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop