再会は最高の媚薬
再会は最高の媚薬
「はぁ~」

居酒屋の入り口の前に立って胸を軽く叩きながらため息をつく。
もうすでに盛り上がっているだろう大学時代の友人達の席へ早く行かなければならないと思いながらも、なかなか目の前のドアを開けられずにいる。
久しぶりにみんなに会えるのはすごく嬉しい。でも・・・その輪の中に彼もいる。

三浦 聡史。2年前、22歳の時私の彼だった人。苦しくなる位大好きだった人。

彼のことが大好きで私ばかりが空回りして、いつも冷静な彼には愛されていないような不安に襲われて。大好きだった笑顔は他の女の子に見せる方が多いような気がして。

何度も「私のこと好き?」って自分の心を埋めるように聞いてしまった。
だけど「好きだよ」と答えてくれた聡史のことを見る度に切なくなった。
『笑顔』とか『照れ』とか、そういうものはいつもなくて。
『犬好き?』とか『猫好き?』とかそんな質問に答えるのと同じテンションで返されたから、最初は嬉しかった彼の「好きだよ」が、私の心を埋めてくれなくなっていった。

ー大好き、離れたくないー

ずっとそう思っていたのに。
大学を卒業してお互い働き始めると、忙しさに振り回されて思うようにデートもできなくなって。

大好きな人と一緒にいるのに、いつも寂しかった。

友達が嬉しそうに彼氏の話をしてくると、愛されている友達が羨ましくてしょうがなかった。
そのうち『自分は聡史に愛されていない』と思いつめてしまい、今思えばあまりに勝手でひどい言葉をぶつけて別れを告げてしまった。

『私ばかりが聡史を好きなんだよ。聡史と一緒にいると悲しくなる』

そう言い逃げして彼との連絡を遮断した。
深く追いかけて来ないことに複雑な感情もあったけど、『やっぱりね』と心に強く言い聞かせて一つの恋を終わりにした。
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