見つめられない
定時も近くなって、

一段とキーボードの音が響く。

そりゃそうだよね。残業ってできたらしたくないもんね。

あたしだってもれなくそうだ。


しかし、だ。

最近書類が多い。なかなか終わらない。

パソコンとにらめっこ状態は続く。



「中村さん。」

はっとして顔を上げると

「…青木さん。お疲れ様です。」

「お疲れ様。今日は定時?」

「んー…書類終わらなそうなので少し残ります。」

そういって、自分の机の書類を指差す。

「よかった。俺も定時じゃ帰れないんだ。一緒に帰るから少し待たせるかもだけど待てる?」

…ん?一緒に?帰りも?

こんなにおいしい場面ありですか。

固まってる私を余所に

「んじゃ帰りにね。」と私の前から去っていった。
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