真夜中のパレード
欲しい物。




「映画、面白かったですね」



結局来てしまった。


上条は、『天音』といる時は相変わらず満面の笑みだ。


しかも今日の上条は、スーツでない。
清潔感のあるシャツに細身のパンツ、それにダークグレーのコート。
わざわざ土曜日に待ち合わせしたから当たり前だけど、普段着の彼は新鮮で思わずどきっとした。


映画を見終わって、同じ建物に入っているカフェで紅茶を注文した。
休日だけあって店には若い女性で賑わっていた。



「ああいう映画で大丈夫でしたか?」


透子はにこりと笑って頷く。


「はい、すごく面白かったです! アメリカン・ドリームって感じで!」


彼もおかしそうにそれに答える。


「そうですね。ちょっと都合が良すぎる所もありましたけど」


「それも含めてアメリカっぽかったですよね」


詐欺師の男が手品を使って大金を稼ぐという洋画だった。
最初は無一文の男が、口からでまかせでどんどん金持ちになっていく過程はなかなかおもしろいと思った。


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