キャッチ・ミー ~私のハートをつかまえて~
女だから
食材を私のうちに運んだ後、私はまた野田さんちへ行った。
乾燥が終わるまで、私は野田さんから本を借りて読んだり、編み物をして過ごした。

野田さんの趣味は、読書と映画鑑賞と引っ越し。
好きな本のジャンルは、日本の推理小説。
特に「日暮(ひぐらし)警部シリーズ」が好きで、集めているそうだ。

そして映画は、「迫力あるアクション洋画が好き」。
仕事が忙しいので、映画館へ観に行くことより、おうちでDVD鑑賞をする方が、圧倒的に多いとか。

それから野田さんは、「手っ取り早く環境を変えるため」に、「気が向いたら」引っ越ししてるらしい。
ふーん・・・面白い趣味だ。
でも、引っ越しって結構お金がかかるものだと思うんだけど。
それに、手続きだってあれこれあって、面倒じゃないのかな。

なんて思いながら、私は改めて野田さんのお宅をキョロキョロと見渡した。

引っ越しが趣味と言うだけあって、持ち物や家具は少ない方だと思う。
それにモノトーンを基調としたインテリアは、いかにも男の人の部屋という感じがする。
でもガランとしてなくて・・・生活のにおいが感じられるのは、ちょっと意外だったけど、それは、ここにある家具や持ち物全てが、野田さんのお気に入りのものばかりだから、だと思った。
やっぱり男の人の一人暮らしだから、お花はなくても納得だけど、観葉植物がないのは、家を留守にしていることが多いせいかな。

キョロキョロ見渡した私の視線は、アームチェアに座っている野田さんへたどり着いた。

お部屋の主である野田さんは、ただいま読書中。
楕円レンズの銀縁メガネをかけた野田さんは、まるで大学教授みたいで、とてもインテリに見える。
そして私の胸は、なぜかドキドキと高鳴っている。

・・・いけない!

「チラッ」と言うより「じーっ」と見ていることとか、胸の高鳴りを野田さんに気づかれる前に、私は野田さんから視線を外すと、編み物をするため、手を動かすことに集中した。


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