真夜中のパレード
隣で。


その日、透子は上条の部屋に泊まった。


今日も前回泊まった時のように
服を貸してもらった。


もし次この部屋に来るなら
着替えが必要だな、とぼんやり考える。


今度は彼を下で寝かせることはなく、
狭いシングルベッドで隣に並んで眠った。


「すみません、窮屈で」

「いいえ」


透子はぎゅっと上条の身体を抱きしめた。


「直樹さんが近くにいて、嬉しいです」


「……天音さん」


珍しく積極的な透子に驚いたようだ。


きょとんとしているその様子がかわいらしくて、
くすくすと笑った。


「直樹さんの身体って、引き締まってますよね」


その言葉に思わず苦笑した。


「そんなことありませんよ。
もう年ですから。腹の周囲とか、けっこう大変です」


「でも、男の人だなぁって思います」


胸に手を重ねると彼の心臓の鼓動が伝わってくる。



「こうやって隣にいると、すごく安心します」


上条は透子の頭を撫で、少し意地悪な口調で言った。


「天音さんは、身体のどこを触っても
やわらかくて気持ちいいですね」


「えっ」


上条の手が、天音の腕にふにふにと触れる。



「な、直樹さん」


「ほら、ここも」


それからその手が胸に軽く触れた。



「や、やめてくださいっ!」


恥ずかしくて彼を睨みつけると、
上条は穏やかに笑った。


「私は天音さんといると、ドキドキしっぱなしですよ」


「ふふっ」


透子もそれにつられて笑う。


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