真夜中のパレード
側にいる



透子は自分がどうやって家に帰って来たのか、
ほとんど覚えていなかった。



――痛い。



頭が痛い。


ガンガンと、耳鳴りがする。



玄関の扉を開け、
頭についていた留め具を外すこともせず、

無理矢理髪からかつらを引き剥がし、
居間の床に投げつける。


「……っ」


投げ捨てられた頼りないかつらは、
まるで自分自身のようだと思った。



いいんだ、もう使わないから。



くたくたになって投げ捨てられた
茶色い髪の毛を見ていると、

ぼろぼろ涙があふれてきた。


「……ふっ」


口元に手をあて、
鼻をすする。


「ふられちゃった……」


一度涙が流れると、
栓が壊れたように涙が流れだす。


「ふられちゃったよぅ」

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